―犬の子…


―犬の子…!!


悪魔の断末魔にも似た祖父の最後の言葉は、皮肉にも彼の出生の謎をいくつか埋めるのに役立った。

夢の中で彼は考えを張り巡らせた。
犬、それは恐らく身分が低い者への差別表現である。
恐らくは母上と父上は身分違いの恋をした。その結果、何んらかの悲劇が起こった。
お祖父さまは「父親と同じ目に合わせてやろうか?」と言った。とても残忍な声色で。それは間違なく父上に厳重な処罰が下ったことを意味する。

いったい父上はどんな辛い目にあったというのか。
父はそれで報われたのだろうか。

考えが煮詰まるほど彼は何に追われるとも言えない焦躁に駆られた。そして、それを加速させるが如く、同じ言葉が何度も辺りに響いた。