昼前になると、新王の演説が始まっていた。城の聖堂には城に遣える騎士達が集まり、城の外も民が囲んでいた。それらの眼前に堂々とした姿勢の王が語気を強める。
「―先代の王に恥じぬよう、日々この国の平和と発展に努めることを誓おう!」
歓声が上がり、騎士達は剣を高く突き上げた。しかし、王の足は言葉とは裏腹に、いつまでも震えていた。

―犬の子めっ!!―

王は演説が終わると、よろよろと聖堂を後にした。廊下でエミルが足早に駆け寄ってくる。
「いかがなさいました!?」

「心配ない。少し眠ることにする。後のことは大臣に任せた。そう伝えてくれ。」

王は力無くそういうと、自分の寝室へ向かった。
ドアを閉めると勢いよくマントと王冠を脱ぎさり、そのままベッドに倒れ込んだ。
そして、疲弊しきった王はすぐさままどろみの中へと落ちていった。