あの時の記憶が鮮明に呼び起こされる。

―犬の子めっ!―

着替え途中の王子を祖父の言葉が襲う。

―犬の子めっ!―

―犬の子めっ!―

―犬の子めっ!―

身震いがし、膝がガクガクッと落ちて、そのまま王子は前のめりに倒れた。

「大丈夫ですか!!」
慌ててエミルが王子を起こそうと肩を抱きかかえた。その瞬間、羽織かかった紅色のマントはするすると落ち、そのまま前方に勢いよく滑った。王子にはるか距離を起き、マントはピタリと止まった。まるで意思を持った生き物のように。