彼女――少女Nはそれはそれは優しい少女でした。


リボンやフリルなどではなく、例えて言うなら鱗粉を撒き散らす蝶々の髪飾りや朝露に濡れる蜘蛛の巣のブローチが似合うような。


そんな、どこかミスティックな可愛さを兼ね備えた少女でした。


小鳥が囀るように笑い、小さなえくぼの出来る顔は、桃色にほんのりと上気しており。


目を離したら森の狼がさらってしまうのではないか。


私はそんな要らぬ心配をしながら、秘密の花薗で彼女と過ごしていました。


そこは誰にも気付かれる事ない場所。


少女Nと私だけが持っている鍵が、唯一扉を開く事が出来たのでした。