あたしが教室の掃除をしていると、バッグを持った奈美が走り寄ってきた。
「玲香!今日バイトあるから先帰ってるね」
「わかった~」
「……あとさ、悠斗のアホに問い詰めたんだけど口割らなかったよ……ごめんね」
「へ?い、いいよいいよ!」
ションボリとしながら言う奈美。
「奈美が謝る要素どこにもないから!」
「ああいう風に人の不安を煽るだけ煽って……ほんとにもう、悠斗は」
あ、違った。
プンプンしてるだけでした。
「とにかく玲香、気をつけてね。携帯はいつでも繋がるようにして。なにかあったら連絡してよ」
「あはは、過保護すぎだって!大丈夫だから!」
「……そう?じゃあまた明日!」
「また明日!」
奈美と爽やかに別れを告げ、掃除を再開した。
「てか真面目だなお前」
「わあっ!?」
突然背後から話しかけられた。
「び、びっくりした!!」
「……俺のが驚いたわ。鼓膜破る気か?」
「桐沢が悪いでしょうが!」
「俺は悪くないもーん」
「っ!?」
ギュウッと後ろから抱きついてきた。
「なー、もう帰ろうぜー」
桐沢は身長が高いからあたしがスッポリおさまってしまう。
自分のドキドキという鼓動が聞こえてきた。
「分かった!分かったから!ちょちょちょちょっと離れて!!」
「ちょちょちょちょっと?それ何語?」
「だー!!離れろ!!」
「ぷっ。はいはい」
ああもう、なんて心臓に悪いんだこの男!
「けど掃除はサボりません!」
「えー。嘘つき」
「やかましい!!」
「…………」
ふと、悠斗に言われた言葉を思い出した。
『あいつはまだ、玲香ちゃんに隠してることがある』
一体どういう意味だろう?
桐沢はなにを隠してるの……?
