ゆきんこ

「届かねーだろ。」



…と、悠長にもそこに留まる新野だったが……



「………うおっ。」



足をひょいっと避ける。




「……もう少しだったのに。」



「あぶねーあぶねー。」




焦る新野も、かわいらしい。








「チビなのに、バカ力。」



陸くんは、ちょっぴり尊敬の眼差しを私に向けていた。





「…うふふ…、見直したかな?」



「はあ~?んなわけねーだろ!」




そっぽを向いた陸くんは。



顔を真っ赤にして……



ううっ


ラブリー!!








「…お~い、陸ぅ!!」



頭上から…


新野の声。




「喉渇いた。炭酸もってきて~!」



「……。い~や~だ、まだ戦い中!」



「思いっきり休憩してんじゃん。」



「……めんどくさいし。」




「…あっそ。……じゃあ…、福嶋っ、悪いけど持ってきてくんない?」



「………。はいい??」



「家入って真っ直ぐ行くと、右手に台所あるから。冷蔵庫に入ってる。」



「…………。」




いやいや、そこまでオープンでいいわけ?!



初めて来た人に……。






「…大丈夫!俺ん家、ヤロー共のたまり場になってて、しかも昔から客人も多いし…あんまそーゆーの気にしない家族だから。」




「……ああ…、そうなんだ。」




なる程……。



だから新野も、陸くんも……


なんていうか、なつっこい性格なんだ。




「…ゆきんこも戦い中だぞ。」



陸くんが反発するが……





「…行ってくれるよなぁ、『幸ちゃん』。」



「…………!」




新野の小悪魔的なお願いに……



「……おう。行きますとも!」



アッサリやられたのでした。