私たちは……



   友達じゃない。


  知り合いでもない。




顔見知りまで……
いかないと思う。




黒くて、無造作にいじられた髪。


大きな体。



切れ長だけど…くっきりした二重。


スッとした形のいい鼻。





うん、目の保養……、


完了。





男女問わず憧れてしまうだろうその容姿に……



すっかり虜になった私、福嶋 幸は……



この、ほんのり花咲くような一瞬を……



堪能していた。




私が知ってる彼のこと。



名前。



南高校に通っていること。


同い年。


バスケ部。


兄弟に兄貴がいること。






あと……



彼女がいたこと。




……それくらい。




じゃあ向こうは…?
私のこと知っている……?




答えは……



NO!




しるはずもありません。



なぜなら、彼のデータ収集は、バスでの会話を盗み聞きしただけのもの。



もちろん、友人と戯れる彼には……



私の声など、聞こえない。




つまりは………




真っ赤な……他人同士なのだ。