ゆらり揺られてバスの中……。
いつものように、窓側に座って……
見えない窓の外を、じいっと見つめる。
いつもとは違う午後。
何故かってそれは……
「すげー吹雪だな……。」
「…ホント、すごいね。」
隣りに乗っているのが……
文人だから。
咲は変な気を遣ったのか、一本遅いバスに乗るって言って……、今ここにはいない。
相手は文人なのに……。
何だか違う人に見えてしまう。
初めてバスに乗る文人は、キョロキョロ辺りを見渡して…
どうやら楽しそう。
何より意外なことに、女子高生の羨望の眼差しが……
明らかに、私に向けられていることがわかる。
そういや文人って……
よく、学校で告白されてるっけ。
連れて歩く女の子はいつもかわいい子ばっかりだけど、どれもこれも長続きした試しはない。
…て言っても、本人と恋バナすることはないから……
ホントのことは、何も知らない。
「…何も今日じゃなくても良かったか……。」
吹雪に恐れをなしたか、文人はふうっと溜め息をつく。
「いや、寒い日に冷たいものを食べるのもオツなもんだよ。」
しょげる文人の肩をバシっと叩いて励ます。
「幸は優しいよなあ、マジ。ったく…、咲が煽るから。」
「…………?」
「や、何でもない。つーか、お前何くうの?かなり好きだろ、あそこのアイス。」
「んっと……ベリーチーズケーキかな。」
「……チーズ?それはまた変わったものを……」
「おいしいんだってそれが!」
「…へぇ~……。」
しばらくすると……
そう、いつものように…
あのバス停の前で、バスが止まる。
アイドリングストップした車内は……
一気に寒くなる。
ひゅう~……と、窓の外から……
風が唸っていた。
そして……
和気あいあいと、乗り込んでくる彼ら。
ああ……、
なんとなく気まずい。
どうか彼が……
新野が気づきませんように……!


