ゆきんこ



長い長いハグのあと…、私たちはどちらともなく手を繋いで、ゆっくりと…歩き出す。




向かったのは、駐車場。

余りの寒さに、口数減った新野も…ここでついに、声を上げた。



「……車…スゲー雪積もってるし。エンジン、掛けてねーの?スターターは?」



「いや、あの…こんなに長く待つとは思わなくて。それに…車関係は、出来るだけ安く済ませたくて…。」



「ふーん。あ、ワイパー上げて無かったんだ?」


「え。」


「上げとかないと、その上に雪は積もるわ、凍って窓に張り付くわで…いいことナシ。」


「あ、そうなの?」



「これは出発まで、少し時間…掛かるか。」








ぎこちない音を立てて、車のドアが…開く。


乗ったがいいが、車内にも関わらず、そこも…氷点下。



急いでエンジンを掛けて、風向きをフロントの暖気へと変えた。



と……。

助手席から新野の手が伸びて。

それをまた…捻ると。




冷風が、ぶわっと顔面へと…直撃した。





「ちょっと新野!なにしてんの?」




「…………。……うん。寒いなあって思って。」


「温風になってから変えればいーじゃない。ってか、雪とかさないと…。」


「……。うん、まあな。確かにそうだけど…。寒いし、二人きりだし、雪が…周囲の目から隠してくれてるし。」





頬っぺたに、ヒヤリと…冷たい感触。



「…………。」




冷え性な新野は……唇までもが、冷たかった。



「……やっと、会えた。」



彼の手は…何度も頭を撫でて。

それから、ゆるりと…頬に降りてくる。



首の後側に滑らせるようにしたそれは、やはり背筋をゾクリと凍らせる位に冷たくて。

肩が一瞬…ピクリと跳ねた。




「こういうリアクションが…見たかった。」


小さな音を立てて。
私の唇の…熱を奪ったかと思うと。



今度は、息つく間もないくらいに…塞いでは。

次第に熱を…帯びていく。




「毎日声を聞いたら、こうやって…毎日でも会いたくなる。…触れたくなる。」


繰り返し、繰り返し…

探るようにして。


返事を与える隙も…与えずに。



新野の熱が、伝わってくる。




「文人から…連絡が来て、知ったんだ。」



「……何を…、ン…!」


「先輩がアンタのこと聞き出そうとしてたって。」



「…………。」


「俺のいないところで、ちょっかいでも出されたら…たまんねーし。」



「…………!」



「だから……、アンタを奪いに来た。」








止まないキスの嵐は…

私の全てを奪うようにして。目の前の、新野……



君の虜になっていく。