バスを降りると、新野滉は大きくのびをして……
ふぁあっと欠伸した。
これまた初めて見る顔。
バスを降りる時って、いつもキリっとしてるもん。
「…ふふっ………」
思わず笑みがこぼれてしまう。
「……?どうした?何か面白いことでもあった?」
君だよ、君。
なんていうかな……、そう、新野滉って……
「……あのさ………」
口を開きかけて、くるりと横を見ると……
彼の姿は忽然と消えていた。
「………?!」
よくよく見ると………
いつの間にか、対向車線に渡って……
停まっている車の側で、何やら男の人としゃべっていた。
「……………。」
バスの中でもうすうすとは感じていたが……、
やっぱり…そう、
マイペース……?
てか、
自由人?!
一緒に帰るなんて約束もしてないし、
けれど「バイバイ」ってできてないし……
どうしたもんだと右往左往していると……
「…ちょっと、来て!」
新野滉が、私に手招きしてきた。
キャーッ、呼ばれた!
…なーんてワンコのように浮かれて行ってみると…
「…よし、ハイ押して!」
「……ん?」
何故か二人で横に並び……
車の後ろを………
押すハメに!
「…せーのッ。」
……見ろよ~バレー部の底力~!!
雪で身動きできなくなった車の救出!
初めての協同作業!
役立たずになっては……
たまるもんか!!
タイヤが地面をキュルキュルと空回り……
なかなか上手くは脱出できない。
彼は運転席に座る、若いお兄さんに再び話にいく。
「これって四駆じゃないんスか。」
「FF!タイヤは一応スタッドレスだけど……」
「そうッスか。ここに来るの初めてですか?」
「うん。明日スキー場に行くつもりで、今晩泊まるホテルに向かってたんだけど……。」
「チャレンジャーっすよ、それ。多分のぼれないし…下りなんてスリップして下手したら崖下もありえます。」
「マジか…。」
……あ。県外ナンバーだ。
「チェーンは?」
「持ってない。」
「なら買った方がいいかも。それか……、お兄さん、どこのゲレンデ行くんスか?」


