曇る窓。
じんじんする指先。
ガタガタと揺れるバスの中。
「30分遅れってないわー、ホント!」
バスの運行…
30分遅れ。
おかげで私たちは待ちぼうけ。
「幸ー、あんた髪に雪被ったまま!」
優しくそれをほろう、友人の咲(さき)。
キュッキュッと音をたて…
窓がキャンバスへとかわる。
「雪だるま。」
「あんた毎日描いてるわりにはいっこうに上手くならないねぇ。」
咲は呆れて苦笑した。
「丸と丸を繋げるだけっしょ。それじゃあ岩だ、岩!」
「ひどーい、バスの揺れ、すごいんだもん。」
「ああ……、確かに。」
指でなぞったその跡から…
私は窓の外を見る。
「真っ白……。」
外は大荒れ。
銀世界…なんてものじゃあない。
吹き抜ける風が巻き起こす地吹雪で……
見事視界はゼロ。
「…残念…。」
私はふうって息をついて…
「は?何が?」
咲がいぶかしげに首を傾げていた。
…残念。
今日は…見れないか。
…何が見えないって?
そりゃあわたしだって絵心もない絵を描きつづけるには理由がある。


