楢崎の言葉が……
ぐるぐると頭を駆け巡っていた。
それを払拭したくて。
私はカラオケで馬鹿みたいにはしゃぐ。
『滉、今日7時のバスに乗るって。』
楢崎がそう言うから……
何度も何度も時計を確認して。
もちろん咲も同じで……
はしゃぎながらも、心ここにあらず。
文人は気づいているのか……、
私にピッタリと寄り添って。
その場を離れようとは……しなかった。
そのうちに、
「……えッ…?!」
咲が携帯を片手に、勢いよく立ち上がった。
「………ごめん、みんな。私これから用あって……。先に帰らなきゃ!だから…、また、遊ぼうね!GW…みんな帰って来いよ~!」
咲の力強い言葉に、
「またね、咲!」
「元気でな~!」
みんな次々と別れの言葉を掛ける。
それからぞろぞろと部屋を出て……、
「幸も。…またね!」
手を振り続けて小さくなっていく咲を……
見送った。
咲が慌てるその理由を……、みんなが知っている。
「……青春だねぇ。」
「さすが咲だわ。」
そんなことを言いながら……、
それぞれ、部屋へと戻っていく。
時間は……
午後5時。
新野は……7時のバスに乗るんじゃないの?
私はぽつんと一人、取り残されて……
呆然と、その場に立ち尽くす。
「………。幸…、いいの?お前も行かなくて。」
「…………何で?」
いつの間にか……、文人が側に立っていた。
「…あいつ、新野に会うんだろ?告白阻止しなくていーの?」
「………。文人……?」
「……イヤ、行かなくていいんだ。行って欲しい訳じゃなくて……。ただ、お前ずっと何考えてた?隣りに俺がいるのに、ずっと上の空。時間ばっかり気にしてさ…。誰のこと……、考えてたんだよ。」
楢崎が…言っていた。
傷つけているのは、私の方だと。
文人にこんな顔させてるのは……誰?
「……行かないよ。私は……、行かない。」
「………幸……。」
この後に及んで、また悩もうだなんて……。


