「……なら……、滉の気持ちは……?」
「…………。」
「福嶋さん。私ね…、もうとっくに振られてたの。」
「………!」
「ハッキリ言われた。福嶋さんの事…、好きになったからって。私は……、賭けに負けたの。」
「……楢崎さん……?」
「……試したの、滉の気持ちを。初めは本当に別の大学を受けるつもりだった。でも、離れ離れになるのが怖くて…、A大学に願書出したことを秘密にして、別れ話を切り出した。例え遠距離になったって大丈夫だって、そう言ってもらいたくて……。なのに、滉はアッサリ引き下がった。」
「……新野は…、自分のことで、楢崎さんが悲しむのが……嫌だったんだと思う。あの時…私、同じバスに乗ってた。新野が切なそうにしてたのを……覚えてる。」
「………。今にして思えば…、そうだったのかもしれないな。でも、確かな安心が欲しかった。なかなか会う時間もなくて、ましてや滉の優先順位って決して私が一番なんかじゃなくって……。だから……。」
「………。」
「……同じ大学に受かったら、毎日でも会える。だから…、一旦距離を置いて、もう一度冷静になってから話をしようって思ってたのに。あなたが……現れた。」
「………!」
「前にも言ったけど、二人が並んで歩いてるの見ちゃってさ、滉があんなに自然体で笑っていられることに……最初は驚いた。私といた時はね、きっと束縛しちゃう私に気を遣ってたんだろうね。困った顔で……笑うの。」
「……………。」
「……嫌な予感がした。滉の気持ちを繋ぎとめておく自信なんて一気になくなって……、福嶋さんに宣戦布告した次の日に…告白した。ちゃんと、正直に……。」
「………うん。」
「……予想通り…、手遅れだったけどね。だから、バス停で意地悪しちゃった。滉はあんなに福嶋さんを見てたっていうのに…、まさか、あなたの方がそれを踏みにじるなんて思ってなくて。」
「………うん。」
「……何も……反論しないんだね。」
「…………。」


