「…ごめん、引き止めて。」
楢崎は申し訳なさそうに謝る。
「……ううん。」
そう言いながらも……、
実は怖かったりもする。
どんな言葉が飛び出すのか……。
新野とうまくいったとか?
そんな報告ならば、もう……いらないのに。
「福嶋さんたちも、カラオケ行くんだ?」
「うん。」
「…ウチのクラスも。場所は?」
「Jスタジオ。」
「あ。おんなじ。…じゃあ…、向かいながら話そうか。」
「……うん。」
ふわりふわりと…楢崎は笑う。
それはまるで……
今日の雪みたい。
「……ね、福嶋さんさあ…、文人くんと付き合ってるの?」
「……うん。」
「いつから?」
「………。あの日。バス停の前で…、楢崎さんと新野に会った日から。」
今更……
どうしてこんなことを……?
「……。そっか……。そうだったんだ。」
「…………?」
「…ねえ、それってさ、私が宣戦布告したから?私と滉がヨリを戻したと…思ったから?」
「……ううん。前から告白されてて…。ずっと考えてた。文人とは付き合い長いし、ずっと仲のいい友達だったから…。最初はすごい考えた。でも……、なかなかいないなって。こんなに私を想ってくれる人なんて。」
「…………。じゃあ……、滉は?福嶋さん、好きだったでしょう?」
「……うん。好き……だった。」
隠しようもない。
彼女の純粋な瞳が……
私の胸を刺すから。
正直に……
ちゃんと、応えよう。
「なら、なぜ……?」
「………。敵わないなぁって思った。楢崎さんが大学受かったって聞いて、素直に喜べない自分がいた。……羨ましかったよ。私には…、そんなことはできない。新野を強く想っている、楢崎さんと…、あと、咲には……どう足掻いても敵わないんだって。」
「…………!滉にあなたの気持ちは……?」
「…伝えてない。」


