そうなんです。
楢崎は……
彼氏もできた人間なんです。
あれは……
1月だった。
3学期の始まり。
その帰り……
いつものバス停で……
南校の生徒が乗ってきた。
そのうちの一人が、私のナナメ前……
楢崎の隣りにドカっと腰を下ろし……
二人顔を見合わせては…
笑い合っていた。
私はその日初めて……
その人、【新野滉】の存在を知った。
ちょっぴり恐面。
なのに…
眉を垂らして幸せそうに笑う、彼のその横顔に…
釘付けになった。
それまで彼を知らなかったのは、帰る時間に理由がある。
所属していたバレー部を引退し、早目に帰宅できるようになったことが……
彼を知る、きっかけとなった。
楢崎との会話で、彼が【滉】という名前だと知った。
それから……
時々、部活の話も聞こえてきた。
楢崎は女子バスケ部。
新野滉もバスケ部。
他校のバスケ部同士……
二人の共通点。
うらやましいとさえ……
思ったものだった。
彼女は幸せ者だ、と……。
サバサバとしていて、鼻にかけない美人な楢崎…。
間違いなくモテていて、なのに男の気配がないと思っていたら……
なるほど。
納得……だった。
その楢崎は、
ある日を境に……、
丁度昨日のような雪降る日を境に……
バスには乗らなくなった。
何故かは……
知らない。


