「……福嶋!……やっぱり乗るバス変えてたのかよ。」
「……新野……。」
「あれから、一度も会わなかったから……、怒ってるのかと思った。」
「……ううん、別に…怒ってなんかない。」
「……そっか。」
新野の目線が……
私と文人の手元へと移される。
「……つーか。なんだ……、やっぱ、そういうこと?」
「…………。」
いざ、本人を目の前にすると……
さっきまでの意気込みさえ消えてしまう。
「……。ああ…、そういうこと。」
黙りこくる私を見かねたのか……、
文人が、ハッキリとそう……言った。
「……そっちこそ。良かったね、ヨリ……戻ってたんだ?」
「………は?」
新野は一瞬だけ……眉を潜める。
隣りにいる楢崎が、ふわりと笑って……
「ありがとう、福嶋さん。……応援してくれて。」
「………!」
彼女はそう言って……
新野の腕を掴み、くるりと私達に背を向けた。
……と、ほぼ同時に……
バスのエンジン音が、耳に届いた。
「行こう、滉。」
後ろ姿でさえも、バランスが取れていて……
お似合いの二人。
今……、
ここで別れたら、もう二度と……
会うことはないだろう。
それでいい。
それで……。
「幸。……乗るんだろ?」
「うん。」


