10日間の滞在は撮影とバカンスを兼ねている
今日はココス島へ船で移動して水着の撮影 をする
ココス島で2泊の予定
後日にはウェディングドレスを着て撮影なんてのもあるらしい

水着はともかく
嫁入り前にウェディングドレスを着ちゃうなんて
婚期を逃すって聞いたことあるんだけど 大丈夫?

先輩 切ないね ウェディングドレスを着るなんて
だけれど きっと 似合うだろうな 彼女のウェディングドレス姿 

シャトルボートは波すれすれに動いている
足元がガラス張りになっていて海中が見えるようになっている
透明な海中に小さな熱帯魚たちが群れて泳いでいる姿が見えた

「きゃ~かわいい」

先輩は変わりなく彼の隣にいて 無邪気にはしゃいで彼と戯れている
私はそんなふたりから視線を逸らした

何処までも続く青い空と何処までも広がる海の蒼さの繋がる先を見ていた

「見てぇ ウミガメが泳いでいる」 興奮した彼女の声

彼女が示す指の先に
ゆっくりと波に乗って船のすぐ横を泳いでいるウミガメの姿 

現地のガイドさんが 泳いでいるウミガメの甲羅に触れると幸運が舞い込むと言った
皆が一斉にウミガメに向けて手を伸ばす あと少しあと少しと
私も力いっぱいに手を差し伸ばした
先輩も精いっぱいに腕を伸ばしている 上半身が船からはみ出していく程に

「おい 落ちるから」彼が彼女の体を落ちない様に支える
「あと少し もう 少しなの」

私も精いっぱいに手を伸ばす 伸ばす 限界まで 
私と彼女の手 ふたりの手がウミガメの甲羅に触れた

「やったぁ」子供みたいに大喜びで私に抱きついてくる彼女
「良かったね」


きっと 私たちに幸せは訪れる