「なぜ電話してくれなかったの?」

「電話しようと思ったんだけど……。まいったな。自分じゃないみたいだ」

「え?」

「電話をかけたら負けのような気がして」

 プライドが高いのは私だけではないようだ。

「私もそう思ってた」

「負けとわかって電話をくれたの?」

「えぇ、そうよ」

「それも悔しいな。これから君の家に行くよ」

 二人の夜は長い。