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隣の部屋のハルと麻冶に泣いていることがバレないように声を押し殺して泣いていると、ケータイが鳴った。
ディスプレイを見ると……
-如月 夏子-
(Kisaragi Natsuko)
「……もしもし。」
『あ! 湊? 元気?』
「……ん、元気。」
『……はぁ。
湊さ、嘘つくの下手すぎっ!
そんな嘘でうちを騙せると思ったわけ?!』
「私、嘘つくの下手じゃないと思うけど。
夏子が鋭いんでしょ。」
夏子は私の幼馴染みで、私が佐和田学園に進学することを知っている、唯一の友達。
夏子は将来、心理学の勉強がしたいらしく、物心ついたときから心理学の難しそうな分厚い本を読み漁っていた。
だから、電話越しでも嘘ついてるか分かる。
本当に夏子には敵わない。
『そうかな~??
……じゃなくて!!
湊、泣いてたでしょ!』
「私が泣くわけないでしょ。
しかも、なく理由が見当たらない。」
『……湊、強がりすぎ。
ちょっとぐらいうちを頼ってよ。
うち、そんなに頼りない?』
「そんなことはないけど……。」
『本当は1人で寂しいんじゃないの?』
「だから……」
『だからじゃない!
最初っからそんな気ぃ張ってたら、3年間やっていけないよ。
無理しすぎなんじゃないの?』
ープチンっ。
夏子に言われた一言で私の中の何かが切れた。
「だって、無理するしかないじゃん!!
私だってこうなりたくてココに来たんじゃないんだから!!
本当なら、夏子と同じ高校に進学して、放課後遊んで、たまにはお泊まりしたり、普通の女子高生になりたかったよ!
でもワガママ言えないじゃん!
私は長女だし、永村グループを継ぐのだってもう決まってるし、あの親父に思い詰めたような顔して頭下げられたら、断れないじゃん!!
今私がワガママ言ったら、叶多に負担掛かるかもしれないじゃん!」

