「…だって、芹沢さん聞こえたぁ?」









面白がるような由実の言葉と一緒に

開かれた教室の扉。








目の前に現れた無表情な芹沢の姿に

心臓の奥がグッと締め付けられた。










「あれぇ~?もしかして傷ついた?バカねぇ、アンタみたいな子、からかってたに決まってんじゃん」









クスクス笑う由美の声が…すごく遠くに聞こえる。











…違う
からかうとか…そんな事思ってない。

思った事なんて一度だってない

ただ









ただ
…一緒にいたかったんだ。

俺が
芹沢といたかったんだ


なのに…









声が出てこなかった…














「勘違いしてないで、いい加減、朔に付きまとうのやめてくれる~?」








由美の言葉に、次第に曇っていく芹沢の瞳…




俺は
その目をまっすぐ…
見つめ返すことも出来ずに

ただうつむいていた。














…俺…
なにやってんだ?


大事なもん…
分かってるのに


芹沢との時間が大切だって思うくせに…

…なんで黙ってんだよ



なんで…そんなんじゃないって…

言ってやんないんだよ。



芹沢は何も悪くないのに…

俺が勝手に…そばにいただけなのに

なのに…











…最低じゃん

俺……なんも変わってねぇ



周りの目ばっか気にして傷つくことして…











結局…

一言も言い返しもしないで教室を後にする

芹沢の背中を


俺はただ…









ながめてるだけだった