呆気にとられた沖田さんなんて本当に珍しい、というか初めて見た。
動かない沖田さんの隙をついて、おはぎを一つちょうだいする。うん、おいしい。
「嘘ですよ、ちゃんと覚えています。大事なくて良かったですね。もちろんこのことは誰にも言ってなかったので安心してください」
平坦な口調でいえば、沖田さんはがくり、と項垂れる。
「相変わらずだね、君は…」
「そう簡単に性格やらなにやら変わるのは、フィクションの主人公だけですよ」
「ふぃくしょん?」
「作り話って意味です」
へえ、と興味なさそうに沖田さんはお茶をすする。おはぎを奪った件は見逃してもらえたようだ。
「喀血したところを見つかったのが君で良かったよ」
「なぜ?」
「心配しないし、かといって誰かに言うわけでもない」
「まあ、興味ありませんし」
「そうだね。君のそういうところが好きだよ」
にこりと微笑んでいるのに目が笑ってない。
――試されているのか。愛情を向けられて、私がどのように反応するのか。
考え過ぎかもしれないけど、この人だって十分、ドライな性格で、歪んだ目で世界を見てる。
「ありがとうございます。私は、あなたのこと反吐が出るほど嫌いですけど」
