沖田のいる植木屋の前まで来て、
マオリは足を止めた。

不安そうに玄関のつくりを見上げている。
 
白い布でくるんだ刀を大事そうに抱え、
マオリは決心したように呼びかけた。

「ごめんください。」
 
返事はない。もう一度呼ぶ。

「ごめんください。」
 
マオリはそっと門扉から家の中を伺った。

誰かが出てくる気配はない。
しかし、耳を澄ますと、
あの蜘蛛の巣にからんだような咳が聞こえる。

沖田はやはり、ここにいるのだと実感しマオリは一歩下がった。
 
このまま帰ろうか、と背を向ける。
しかし、再び振り向き高くそびえる屋根を見上げる。
 
意を決して玄関をくぐった。

右手から塀つたいに庭へ続く細い空間があいている。

マオリは一歩一歩、
忍び込むように庭へと進んだ。
 
明るい庭が、若葉をたたえた木々の中に浮かび上がる。

陽だまりの中で縁側に座っているのは、
白い寝巻き姿の沖田であった。