蛍火と白狐




「……印、つけたってどこに、いつの間に?」



青年さんはニコッと笑って、「ちゅ」と額にキスをした。



「ここに、ね」



……油断ならない人だなぁ。なら部屋に来たあの時点で、私に逃げる権利はなかったのか。



「なので、大人しくしていて下さいね。わかりましたか?」



私は仕方なく頷く。すると青年さんは、よしよしと私の頭を撫でた。



「はい、これどうぞ」



青年さんは私に何か布を渡す。これ、着物?いや、私着付け出来ないけど……。



困ったように着物を見つめる。



「僕が着せましょうか?」



「―――!?

け、結構ですっ!」



「冗談です。着るのは今じゃなくていいですよ。明日の朝でも構いません」



そしてまた、私の頭を撫でた。



「疲れたでしょう?ゆっくり休んで下さい。僕も眠いのでもう寝ます。おやすみなさい、蛍」



返事をする前に、青年さんは部屋を出ていった。それはいい。



……何で、私の名前知ってるの?



……考えたって仕方ないよね。寝よう、もう。



私は布団に横になる。



「おやすみ、弥緒」