近くの角を曲がった時、黒い物体が見えた。あまり大きくはないけど、その醜悪な姿に鳥肌が立つ。
二つの黒い角は歪んでいて、黄色く光る目はギョロギョロと忙しなく動いている。
これが、鬼……。
私が怖じ気付いて固まっている間に、二人はすでに動いていた。
「はっ!」
翠くんが鬼の足元に小さな結界を作り、それにつまずいた鬼を言葉がすかさず地面へ蹴り倒す。
怒って立ち上がり、鬼は大声で叫んだ。ビリビリと空気が震える。
次の瞬間、私の周りを黒い靄が包んだ。
「何これ!?」
必死に払おうとしても、靄はまとわりついて離れない。
「蛍!」
言葉の声が聞こえた頃には、私は靄に完全に包まれ、何も見えなくなっていた。
「くそ、おい返事しろ町―――」
二人の声も鬼の声も私の意識も、そこでぷっつりと途切れた。


