蛍火と白狐




四限目が始まって早十分、言葉はまだ来ない。どうしたんだろう……。



「……?」



机の横にかけてある鞄がもぞもぞと動いた。チャックを少しだけ開けると、中から弥緒がピョコッと飛び出した。



弥緒は窓辺に立って、私を見ながら窓を尻尾で叩いている。外に行きたいの?



でも今は授業中だし、どうしよう……。



私が迷っていると、窓辺にいた弥緒がいきなり私の頭に突進してきた。



何の構えもしていなかった私は、その突進を受けて椅子から落ち、床に倒れる。



「痛っ……」



「ま、町野さんっ、大丈夫!?」



先生が駆け寄ってきて、私を起こしてくれた。あぁ、そっか、弥緒の狙いはこれか。



「痛っ!!」



ゴンッという音がして、見ると、弥緒が翠くんの頭をべしべし攻撃していた。



「すみません、体調が悪いみたいなので、保健室に行ってもいいですか……」



「ぼっ、僕も頭痛が……」



「わかったわ」



「せ、先生、私町野さんの付き添いで行きますっ。保健室に行くまでに倒れちゃわないように」



ほのかが慌てて付き添いを申請した。ほのかがいてくれた方が心強い。



「わかったわ、よろしくね」



私達三人はかくして教室を出た。