「そろそろ帰らなければ、ほのかちゃんに怒られてしまいますね」
その一言で感情が一気に現実に引き戻され、そういえば私はどのくらい眠っていたのだろうかという疑問が頭を占める。
窓の外を見れば丁度日が沈む直前で、空は薄暗かった。
「……行動は早よ起こす。その霊狐が成獣になり次第、仕掛けるからな」
「……行きましょう」
私はベッドから降りて、言葉の後に付いていく。
ドアノブに手をかけた所で、言葉は鏡華ちゃんを振り返った。
「鏡華」
「何や」
言葉は口を開き、何かを言おうとしてためらった。そして結局何も言わずに口を閉ざす。
「何でもありません、忘れて下さい」
「そういう時のお前は大抵何でもなくないやん」
「いえ、大したことないので」
「大したことないなら言うてみ」
「……鏡華」
言葉はちょっと真剣そうな顔で鏡華ちゃんを見る。
「どんとこい!」
「そのワンピース、大人向けなのであまり似合ってませんよ」
その一言に、鏡華ちゃんはあんぐりと口を開け、そしてワナワナと震え出した。
「さ、逃げますよ」
私達はというと、すでに廊下に出て走っている。
「死ねえええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
遠くから鏡華ちゃんの怒鳴り声が聞こえた。