「―――……」



突然言葉の表情が真剣になり、握られた手に少し力が籠った。



「……思ったより早く現れた……。蛍、ちょっと走りますよ」



「え、あ、うん」



言葉は私の足の速さに合わせながら走って、近くの路地裏に入る。



そして「失礼します」と私に言った次の瞬間、ふわっと地面から足が離れた。



いつもより近い言葉の顔と、支えられてる感覚から、抱き上げられたんだと理解するまでに数秒。



あ、何か風を感じる。そう思った時、私達はすでに屋根の上にいた。



そして、景色は認識不可能なスピードで流れ始める。



「―――っ!!!」



私は思わず言葉にしがみつく。



何か急がなきゃならなくなったんだろうなと思いを巡らせながら、ギュッと目を閉じる。



やがて、ピタリと風が止んだ。恐る恐る目を開けると、そこはどこかの屋敷の屋根の上で。



だけどそんなことも気にならないくらい、私の頭はとある一つの疑問と恐怖に捕らわれていた。