蛍火と白狐




重い気持ちのまま義父さんに背を向け、俺は修行のために歩きだした。



―――瞬間。



『逆だ。お前がわかろうとしないのだろう』



背後から禍々しい気配を感じ、咄嗟に振り向いた。



「だっ、誰だっ!!?」



誰だと言っても、目の前には義父さんしかいない、けど。



「……どうした、翠。いきなり叫んで」



義父さんが訝しげに俺を見た。禍々しい気配はいつの間にか消えている。



「ぁ、いや……。何でも、ないです」



「……?修行、頑張りなさい」



「はい」



義父さんはそれだけ言うと、去って行った。



義父さんには聞こえなかったのか?あの恐ろしい気配も感じなかったのか?



あの優秀な義父さんが?



……今のは一体、何だったんだ……?



義父さんが理解しようとしないんじゃなくて、俺の方が理解しようとしてない、だって?



どういうことだよ、意味わかんねぇよ、含みのある言葉だけ残して消えてんじゃねぇよ。



かっこつけ逃げかよクソ野郎!かっこつけ逃げってなんだ?



知るかバカ!!