蛍火と白狐




「お祖父さん、翠に一体何を?」



「ひろ……義父さん」



淵川 博文さんこと、俺の義父さんは、引き戸の数センチの隙間から覗いていた。



「大事な話じゃよ」



「今、鬼神を悪だという風に聞こえましたが。困りますね」



「そんなことは一言も言っとらん。何が悪で何が正義かは、自身が決めるものじゃ」



「鬼神は絶対的正義ですよ」



「やれやれ、盲目じゃのう、博文さんは」



……何やら険悪な雰囲気が形成されていってるような気がする。



この二人仲が悪いからなぁ。会う都度会う都度しょうもないケンカばっか。



「……俺、修行してくるよ」



居た堪れなくなって、俺は立ち上がり、そそくさと部屋を出る。



「待ちなさい、翠」



義父さんが俺を追うように同じく部屋を出、言葉をかけてきた。



「お祖父さんの話は気にしなくていい。年寄りの戯言(たわごと)だ」



「……はい」



それは違う。爺ちゃんはあの雰囲気で戯言なんか言わない。全てが全て、意味のある大事な話だ。



どうして義父さんはそれがわからないんだ?