蛍火と白狐




「……俺も帰るか」



翠くんが鞄を持って立ち上がった。特に用もないし、私も帰ろう。



玄関で靴を履き替えて翠くんと別れる。そのまま帰り道を歩いていると、言葉が話しかけてきた。



「明日は暇ですよね?」



「うん」



「なら、出張しましょうか」



……出張?



意味がわからなくて疑問符を浮かべている私を、くすくす笑う言葉。



「行ってみればわかります」



「そう、なの?」



出張、か。普通のお出かけとかじゃなくて、きっと大事なお出かけなんだ。



ちょっと覚悟して行こう。