蛍火と白狐




何も言わずに階段を降りていく言葉。何だか少し変だ。



「ね、ねぇ、言葉」



話しかけると、言葉はようやく歩きを止め、振り返った。



「どうしたの……?」



「いいですか、彼女にはあまり近寄らないで下さい」



彼女って、荻南さんのことだよね。



「どうして?」



聞くと、言葉は複雑そうな顔をする。言いにくそうな雰囲気を察した私は、慌てて首を振った。



「言いたくないなら、言わなくていいよ」



「……言いたくない、というわけではないのですが、言いにくいのは確かです」



「そっか……」



どうしてか知りたいけど、言葉がそう言うなら無理に追究しちゃ駄目だ。



「ですが、彼女には極力近付かないこと。これは守って下さい」



「う、うん」



よくわからないけど、あまり近寄らないことにしよう。