廃工場の中は、使われなくなってから随分経つのか、埃っぽかった。
大きな窓から降り注ぐ光が、それを更に際立たせている。
薄暗くて少し怖い。
「で、話ゆうんは他でもない。鬼が目覚めようとしとる」
……鬼?
「鬼って、角生えてて、大きくて、棍棒とか金棒とか金属バットとか釘バットとか持った鬼?」
「蛍、最後の二つが近代化されてますよ。鬼はバットを持ちません」
「せやな。それ抜かしたらまぁ半分正解言うたトコか」
あれ、持ってない?
「鬼はな、角生えてて、別にサイズは普通で、武器は己なんや。姿も人間に擬態しとる」
「目覚めると、何か災いでも起きるの?てか目覚めるって何よ」
「鬼は災厄をもたらす神です。下手をすれば、あちら側は滅びかねない程の強さを所有しています。
ですから僕達は協力して、鬼を封印してるんです。百年しか持ちませんが」
「何で封印なのよ。殺しちゃ駄目なの?」
「鬼は不死身やからな。いくら攻撃した所で死なんし、あれ以上年を取ることもない。せやから、封印するしか手立てがないっちゅうこっちゃ」