(永花ふうさん)

ラスト
『死者との恋愛成就(悲恋)』が悲しく描かれていました。


『あの柳小路はどうなったのだろう?』

そう思いつつ、
『あの路は怖いから、もう通るのはやめよう……』と逃げていたのですが


家主が居なくなったお屋敷

新たに流れる噂話

全てを知る観音様


それらを盛り込みながら、『残された者の想い』を、あの冒頭の描写で綴られていたならば、

いつまでもあの『小路』の柳の枝は
静かに
そして綺麗に
いつも悲しく揺れている、

そんな余韻が残ったと思います


(上杉さん)

登場人物の心の流れをよく汲み取っていて、私にはとても繊細な作品に感じられました。やかましくなく静かに終わった最後も終始作品に流れる雰囲気とよくあっていてとても良かった。推薦作ということで気になって、今こっそり感想ノートを覗いてきましたが、やはりそうしたところが人を感じ入らせる作品に仕立てているのかな、と思いました。私もツボを押された一人。変に劇性のあるオチをつけられても作品が台無しになってしまったのかなと、思います。そうすると、結局そこでしかなくなってしまう。

ホラーが妙に良いのもこれはまさにこの小説の持つ文体の異化作用なんでしょうね。時代小説的な非日常言語、雰囲気が、ホラー特有の非日常性にピタッとくる。


(オサさん)

女の情念はその深さゆえ、恨みは蛇にも鬼にでも――と燃えたぎるようで。
しかし語りといえば始終淡々としており、それはまるで紙芝居を見ているかのようでした。
一つの場面でそこにある絵以上のものを想像し、頭の内で動かし進む、恐ろしくも幻想的な美しさ。
ラストの成仏、また丁稚の六助が主人公であった事で、ますますその紙芝居効果(?)に吸い込まれたのかもしれません。