緋色の暗殺者 The Best BondS-4

 そうこうしている内に、オークションは二品目の競りへと移っていた。
 下層から上げられた商品は落札されるとそのまま各落札者の部屋の下にある落札品集積場に移動し、オークション終了後に精算を確認してから纏めて部屋に上げられるという仕組みらしい。
 リゼはその後も積極的にオークションに参加し、ゼルは当初の目的も全てリゼがオークションに参加したいがための口実だったのではないかと首を捻りながら見守った。
 最後の商品である【髑髏の右目】をリゼが競り負けたことでオークションは閉会する――かに思われた。
「皆様、楽しんでいただけましたでしょうか! 白金の月に相応しい品の数々、ご満足いただけたと自負しております。それではここで! リストには無いサプライズ商品を用意させていただきました! 今宵唯一の人間を格安で提供させていただきます!」
 帰り支度を始めていた全ての貴族が動きを止めた。
 ゼルの背筋を嫌な予感が這った。否、それはもはや確信。
「賞金額は百三十五万ガルカ、飼うも良し、働かせるのも良し、鷺裁に首を売って株を上げるも勿論良し! ではサプライズに相応しく、驚異の一ガルカからのスタートです!」
 カプセルが稼動し投影されたのは、見慣れない装束に身を包み、髪を結い上げて真っ赤な紅を刷いてはいたが、紛れも無くエナだった。
 だがそう認識するには少々時間を要した。
 普段とは違う出で立ちも一つの要因ではあるが、彼女の瞼が閉じられていたからというのが何よりの理由だ。
 四肢を投げ出しているその寝姿はまだあどけなく、血色は悪いがそれを除けば何処にでも居る町娘だ。
 海賊相手に啖呵を切ったり、銃で足を撃ち抜かれても尚歩いて見せるような少女には到底見えない。
 猫のような大きな瞳に宿る勝ち気で頑固な意志があってこそ、彼女は鮮烈な個性を発揮するのだ。
「ーーっ! エ……」
「静かに!」
 一歩踏み出し、名を呼ぼうとしたゼルをリゼが俯いたまま制する。
 咄嗟に口を閉じたのは、そこに宿る厳しさのせいだ。
「……取り乱せば、付け入る隙を与えるだけです。どうか、落ち着いて。冷静に努めてください」
 奥歯を噛み締めたままのような篭った声に、彼もまた決して平静ではないのだとゼルは気付いた。
 ゼルは半眼を閉じ拳を作ることで衝動を抑えつける。