「パゴニの居城……?」
「その昔、砂漠にこの楽園を拓いたとされる女神が滞在したとされる屋敷の呼び名です。逸話ですけどね」
無駄口はやめろと言いながら律儀に答えてくれるリゼの言葉に頷こうとしてやめた。
どうせ見えていないのだし、見えていたら見えていたで、いちいち動くなと怒られそうだ。
「それでは参りましょう! 一品目はこちら! いきなりの目玉商品です!」
進行役の言葉に伴って、ブースの明かりが消えた。
カプセルの中だけが明るく照らされ、動く音が聞こえたかと思うと、宝石箱に入った石が投影された。
それは全ての参加者に平等に見えるように、ゆっくりと回転を始めた。
「希代の賢者、ミルハが片時も離さなかったといわれる輝石(キセキ)! ミルハの雲隠れと共に長年行方がわからず、既に失われたかと噂されておりましたが、先日ミルハが埋葬されたとされるお墓の発見により……」
進行役は何やら大層な説明を続けていたが、ゼルは途中で聞くことを諦めた。
どう見てもそこらへんに落ちていそうな石ころだし、そもそもミルハとは誰だ、という次元なのだ。
――こんな石、誰が欲しがるんだよ。
有り難さのかけらもわからないゼルは心中で呟く。
だから驚いた。
「では、最初に相応しく百万ガルカからのスタートです!」
「百一万!」
競りが始まるや否や、一番最初に名乗りをあげたのがリゼだったことに。
「アンタか!」
思わずツッコミを入れてしまった。
だがリゼはそれどころではないようで、ゼルに構うことなくオークションに参加している。
結局ミルハの石とやらは二百三十万ガルカでリゼが落札した。
二百三十万ガルカがどれくらいの金額なのかというと、トルーアでは一軒家が、ゼルの故郷では豪邸が建ってしまう。
「……石ころが……金貨二百枚以上……」
その価値観を一般市民に理解しろというのは土台無理な話である。
ゼルは感嘆に近い驚嘆をリゼに覚えた。曲がり間違えば尊敬ともとれる感覚だ。
「あの石の歴史的価値もわからぬくせに、値を吊り上げましたね。先程の意趣返しのつもりですかね、忌ま忌ましい」
最後まで競っていた相手への文句を聞くに、どうやらその貴族がオークション前にリゼが交渉を試みた相手のようだ。
ちらりと視線を投げる。
口許しか見えないが、なるほどリゼが言うとおり、あまり賢そうには見えない。
「その昔、砂漠にこの楽園を拓いたとされる女神が滞在したとされる屋敷の呼び名です。逸話ですけどね」
無駄口はやめろと言いながら律儀に答えてくれるリゼの言葉に頷こうとしてやめた。
どうせ見えていないのだし、見えていたら見えていたで、いちいち動くなと怒られそうだ。
「それでは参りましょう! 一品目はこちら! いきなりの目玉商品です!」
進行役の言葉に伴って、ブースの明かりが消えた。
カプセルの中だけが明るく照らされ、動く音が聞こえたかと思うと、宝石箱に入った石が投影された。
それは全ての参加者に平等に見えるように、ゆっくりと回転を始めた。
「希代の賢者、ミルハが片時も離さなかったといわれる輝石(キセキ)! ミルハの雲隠れと共に長年行方がわからず、既に失われたかと噂されておりましたが、先日ミルハが埋葬されたとされるお墓の発見により……」
進行役は何やら大層な説明を続けていたが、ゼルは途中で聞くことを諦めた。
どう見てもそこらへんに落ちていそうな石ころだし、そもそもミルハとは誰だ、という次元なのだ。
――こんな石、誰が欲しがるんだよ。
有り難さのかけらもわからないゼルは心中で呟く。
だから驚いた。
「では、最初に相応しく百万ガルカからのスタートです!」
「百一万!」
競りが始まるや否や、一番最初に名乗りをあげたのがリゼだったことに。
「アンタか!」
思わずツッコミを入れてしまった。
だがリゼはそれどころではないようで、ゼルに構うことなくオークションに参加している。
結局ミルハの石とやらは二百三十万ガルカでリゼが落札した。
二百三十万ガルカがどれくらいの金額なのかというと、トルーアでは一軒家が、ゼルの故郷では豪邸が建ってしまう。
「……石ころが……金貨二百枚以上……」
その価値観を一般市民に理解しろというのは土台無理な話である。
ゼルは感嘆に近い驚嘆をリゼに覚えた。曲がり間違えば尊敬ともとれる感覚だ。
「あの石の歴史的価値もわからぬくせに、値を吊り上げましたね。先程の意趣返しのつもりですかね、忌ま忌ましい」
最後まで競っていた相手への文句を聞くに、どうやらその貴族がオークション前にリゼが交渉を試みた相手のようだ。
ちらりと視線を投げる。
口許しか見えないが、なるほどリゼが言うとおり、あまり賢そうには見えない。

