商品が運び込まれるのだから、なんとかなると思っていたのだが、考えてみれば、商品の受け渡しがどのように行われるのか聞いていなかった。オークション終了後、別の場所で取引される可能性だってある。
とんだ盲点だ。
「いった……」
枷と足首の間に着物の襟に詰まっていた綿を噛ませてはいるが、皮がめくれてしまっているそこはふとした瞬間に痛みを訴える。
ここ最近、足の災難続きだな、と何ヶ月かを振り返る。
足をくじいたり、銃で打ち抜かれたことに比べたら、これくらいの傷はなんでもないのだが、地味な痛みだけになんとも腹が立つ。
この地下屋敷の様式に合わせて拘束具も昔ながらのものであることは有り難いが――爆発などの余計な機能がついていないぶん、だ――地味ながらも堅実に体力を削ぎ、体を痛め付ける。
「鍵……ってゆか、時間さえあればこんなもの」
牢の鍵にした要領で外せるはずだ。
「なんで先に外しとかなかったんだ、あたし」
忌ま忌ましい思いで足を見るが、今更何を言っても始まらない。
落ち着いているつもりでいたが、時間に焦り状況認識を怠るほど混乱していた。それが事実だ。
「あの男が紛らわしいから……!」
ジストと同じ、紅をその身に宿すあの男の存在に罪をなすりつけることにしてエナは苦々しく呟いた。
あの男の出現で少なからず動揺してしまった。
身に纏う空気とでもいうものがどことなくジストに似ていたことで、錯覚して狼狽したのだ。
意味ありげな視線や、ほんの一瞬溢れた殺意がジストから向けられたものである、と。
――だから、理由が知りたくなったんだ。
あの視線と殺意の意味を知りたいと思ってしまった。知れば自身を納得させられると思ったのだ。
あの男から向けられるものは好意的なものじゃなきゃ嫌だ、なんて。
――そんなの我が儘だ、って……。
エナは俯き唇を噛んだ。
あの男はジストではない。
そうわかってはいるのに、どうにも感情が納得してくれない。
あからさまな嫌悪が向けられることを、何処吹く風と受け流すことができなかった。
それはきっと、自身がジストに似たあの男に、無条件に好意を抱いてしまったからだ。
とんだ盲点だ。
「いった……」
枷と足首の間に着物の襟に詰まっていた綿を噛ませてはいるが、皮がめくれてしまっているそこはふとした瞬間に痛みを訴える。
ここ最近、足の災難続きだな、と何ヶ月かを振り返る。
足をくじいたり、銃で打ち抜かれたことに比べたら、これくらいの傷はなんでもないのだが、地味な痛みだけになんとも腹が立つ。
この地下屋敷の様式に合わせて拘束具も昔ながらのものであることは有り難いが――爆発などの余計な機能がついていないぶん、だ――地味ながらも堅実に体力を削ぎ、体を痛め付ける。
「鍵……ってゆか、時間さえあればこんなもの」
牢の鍵にした要領で外せるはずだ。
「なんで先に外しとかなかったんだ、あたし」
忌ま忌ましい思いで足を見るが、今更何を言っても始まらない。
落ち着いているつもりでいたが、時間に焦り状況認識を怠るほど混乱していた。それが事実だ。
「あの男が紛らわしいから……!」
ジストと同じ、紅をその身に宿すあの男の存在に罪をなすりつけることにしてエナは苦々しく呟いた。
あの男の出現で少なからず動揺してしまった。
身に纏う空気とでもいうものがどことなくジストに似ていたことで、錯覚して狼狽したのだ。
意味ありげな視線や、ほんの一瞬溢れた殺意がジストから向けられたものである、と。
――だから、理由が知りたくなったんだ。
あの視線と殺意の意味を知りたいと思ってしまった。知れば自身を納得させられると思ったのだ。
あの男から向けられるものは好意的なものじゃなきゃ嫌だ、なんて。
――そんなの我が儘だ、って……。
エナは俯き唇を噛んだ。
あの男はジストではない。
そうわかってはいるのに、どうにも感情が納得してくれない。
あからさまな嫌悪が向けられることを、何処吹く風と受け流すことができなかった。
それはきっと、自身がジストに似たあの男に、無条件に好意を抱いてしまったからだ。

