だが明日太陽が昇った時に生きている者が勝者だとするのなら、確かに戦わないという選択肢があってもいい。
何を以て勝ちとするかは人それぞれだ。
――ただ。
「アンタがそう思うならそれでもいい。けどよ、オレにはオレの世界の生き方ってやつがある。オレはアイツに救われた。今こうして旅が出来てンのも、アイツのおかげだ。アイツには、その恩がある。だからアイツが戦う時はオレも一緒に戦う。そう決めてンだ」
そう、彼女が居なければ、自身はまだ故郷の村で訥々と夢を思いながら己を責め続けて居たかもしれない。
その恩に報いる方法をゼルは己の剣技を捧げることとした。
彼女が力を必要とするならば、己が彼女の剣になるのだとゼルは自身に課したのだ。
「扉ぶっ壊してでも、オレは行く」
「……まったく、とことん物騒な人種ですね」
リゼは目に見えて面倒臭そうな顔をした。それでも先程感じた神経の尖りは消えていたことにゼルは内心ほっとする。
「愚直も美徳ですが、よく考えてみてください。貴方が今此処から出れば規則を破った違反者です。そんな貴方にこの組織はどんな手を下すと思います?」
「まあ、警備隊が次々湧いてくンだろォな」
アンタん家の時みてェにな、と付け加えると、リゼは当然でしょうという顔をした。
「そうですね。此処から出さぬ為に守りが強化されます。彼女が既にこの屋敷から去っていればよいですが、もしまだ何処かにいるとしたら? 貴方の行動は彼女の首を絞めることにも繋がりかねません。そうなるよりは、もっとも情報が入りやすい場所ーーつまりこの屋敷の中枢で現状を把握すべきだと、私は思いますが? 無論、彼女の足を引っ張りたいというなら止めませんが」
つらつらと長くはあったが弱い所を的確に突かれ、ゼルはぐっと押し黙った。
自身の行動が事態の悪化を招くことだけは避けたい。
ただでさえ、既にややこしい事態になっているのだ。
「……」
無言で部屋の中央に取って返すと、リゼは満足そうに頷いた。
「賢明な判断です。さあ、そうと決まれば紅茶でもいれてもらいましょうか。レモンスライスは二枚。砂糖も多めでお願いします」
まるで自室のように寛ぐリゼは、部屋に用意されていた紙面を開いた。
これが大人の男の余裕なのだろうか。
こちらは暢気に紅茶などいれる気分ではないというのに。
何を以て勝ちとするかは人それぞれだ。
――ただ。
「アンタがそう思うならそれでもいい。けどよ、オレにはオレの世界の生き方ってやつがある。オレはアイツに救われた。今こうして旅が出来てンのも、アイツのおかげだ。アイツには、その恩がある。だからアイツが戦う時はオレも一緒に戦う。そう決めてンだ」
そう、彼女が居なければ、自身はまだ故郷の村で訥々と夢を思いながら己を責め続けて居たかもしれない。
その恩に報いる方法をゼルは己の剣技を捧げることとした。
彼女が力を必要とするならば、己が彼女の剣になるのだとゼルは自身に課したのだ。
「扉ぶっ壊してでも、オレは行く」
「……まったく、とことん物騒な人種ですね」
リゼは目に見えて面倒臭そうな顔をした。それでも先程感じた神経の尖りは消えていたことにゼルは内心ほっとする。
「愚直も美徳ですが、よく考えてみてください。貴方が今此処から出れば規則を破った違反者です。そんな貴方にこの組織はどんな手を下すと思います?」
「まあ、警備隊が次々湧いてくンだろォな」
アンタん家の時みてェにな、と付け加えると、リゼは当然でしょうという顔をした。
「そうですね。此処から出さぬ為に守りが強化されます。彼女が既にこの屋敷から去っていればよいですが、もしまだ何処かにいるとしたら? 貴方の行動は彼女の首を絞めることにも繋がりかねません。そうなるよりは、もっとも情報が入りやすい場所ーーつまりこの屋敷の中枢で現状を把握すべきだと、私は思いますが? 無論、彼女の足を引っ張りたいというなら止めませんが」
つらつらと長くはあったが弱い所を的確に突かれ、ゼルはぐっと押し黙った。
自身の行動が事態の悪化を招くことだけは避けたい。
ただでさえ、既にややこしい事態になっているのだ。
「……」
無言で部屋の中央に取って返すと、リゼは満足そうに頷いた。
「賢明な判断です。さあ、そうと決まれば紅茶でもいれてもらいましょうか。レモンスライスは二枚。砂糖も多めでお願いします」
まるで自室のように寛ぐリゼは、部屋に用意されていた紙面を開いた。
これが大人の男の余裕なのだろうか。
こちらは暢気に紅茶などいれる気分ではないというのに。

