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そこはまさに、夢が具現した場所だった。
「ぅおおぅっ! すっげぇぇ!!」
高い入場料を払い、プレタミューズに一歩踏み入れたゼルは、ただでさえ大きな声を歓喜に染めてきょろきょろと周りを見回した。
天蓋付き球場のプレタミューズに出入り出来るのは東西南北にある各門からのみ。
その中でもセントラルゲートとされている南の門には、この世界を創ったとされる女神の像がある。
その目に嵌まる宝玉は、最高級の青玉。
人々の口には『星玉』とのぼる、星の色を凝縮したような代物だ。
その像を見る為だけにこの地を訪れる人も多い。
一財産と言って差し支えない程高額な入場料を支払い足を踏み入れられる人間は一握りなのだ。
その入場料に見合う、現実の隔離された空間を知ることができたゼルはまるで少年のようにきらきらと目を輝かせている。
まず、目の前に現れるのは、城を思わせる時計搭。
間違いなくこの街一番の名物だ。
世界最高峰の建築家、世界最高峰の彫刻家、世界最高峰の……まぁ、名だたる者が最高級の材料を惜し気もなく使い造りあげた傑作である。
だが、造形物に余り興味が無いエナは時計塔のことなどまるで眼中に入れず「うぅ、寒っ」と、腕を擦りあげて、地団駄を踏んだ。
砂漠の只中にあるとは思えない寒さ。
季節感を大事にするために四季に沿って空調をきかせているのだが、エナに言わせると「余計なことしやがって」らしい。
砂漠の真ん中にあることも街ごと空調することもエナにとっては、これだけ金があるんですよという創始者のひけらかし、若(モ)しくは権威の象徴でしかない。
まあ、赤道から比較的高緯度にある砂漠である以上、夜ともなればこの時期は氷点下を突破してしまうため、娯楽施設として空調はとても大事なことなのであるが。
「ゼル、あたしの上着、出し……こら、話を聞……かなくてもいいから上着寄越せー!!」
荷物を持ったままはしゃいで人の波に流されていくゼルにエナがぴょんぴょん飛び跳ねながら手を伸ばす。
聞こえていないわけではなかろうが、目の前に興味惹かれるものがあるとき、そこには時差が生じる。
「寒いってば!! つか、あんた寒くないわけ!?」
そこはまさに、夢が具現した場所だった。
「ぅおおぅっ! すっげぇぇ!!」
高い入場料を払い、プレタミューズに一歩踏み入れたゼルは、ただでさえ大きな声を歓喜に染めてきょろきょろと周りを見回した。
天蓋付き球場のプレタミューズに出入り出来るのは東西南北にある各門からのみ。
その中でもセントラルゲートとされている南の門には、この世界を創ったとされる女神の像がある。
その目に嵌まる宝玉は、最高級の青玉。
人々の口には『星玉』とのぼる、星の色を凝縮したような代物だ。
その像を見る為だけにこの地を訪れる人も多い。
一財産と言って差し支えない程高額な入場料を支払い足を踏み入れられる人間は一握りなのだ。
その入場料に見合う、現実の隔離された空間を知ることができたゼルはまるで少年のようにきらきらと目を輝かせている。
まず、目の前に現れるのは、城を思わせる時計搭。
間違いなくこの街一番の名物だ。
世界最高峰の建築家、世界最高峰の彫刻家、世界最高峰の……まぁ、名だたる者が最高級の材料を惜し気もなく使い造りあげた傑作である。
だが、造形物に余り興味が無いエナは時計塔のことなどまるで眼中に入れず「うぅ、寒っ」と、腕を擦りあげて、地団駄を踏んだ。
砂漠の只中にあるとは思えない寒さ。
季節感を大事にするために四季に沿って空調をきかせているのだが、エナに言わせると「余計なことしやがって」らしい。
砂漠の真ん中にあることも街ごと空調することもエナにとっては、これだけ金があるんですよという創始者のひけらかし、若(モ)しくは権威の象徴でしかない。
まあ、赤道から比較的高緯度にある砂漠である以上、夜ともなればこの時期は氷点下を突破してしまうため、娯楽施設として空調はとても大事なことなのであるが。
「ゼル、あたしの上着、出し……こら、話を聞……かなくてもいいから上着寄越せー!!」
荷物を持ったままはしゃいで人の波に流されていくゼルにエナがぴょんぴょん飛び跳ねながら手を伸ばす。
聞こえていないわけではなかろうが、目の前に興味惹かれるものがあるとき、そこには時差が生じる。
「寒いってば!! つか、あんた寒くないわけ!?」

