緋色の暗殺者 The Best BondS-4

 勿論約束した当人同士ではないゼルのせいになどなるはずがないのだが、彼らを仲間として受け入れたゼルの中には連帯責任、一蓮托生、などという言葉が生まれつつあるのである。
 そしてそれが判断を迷わせるのだ。
「何か言いました?」
 眉を顰めて振り返ったリゼにゼルは苦笑した。
 それは尻拭いという貧乏籤をすすんで引く自分自身への苦笑い。
「……これはオレの役目だって言ったんだ」
 エナを護るのは自身の役目ではなく、ジストの役目だ。エナが連れ去られるのを、あの男が指を銜えて見ているはずがないのだから。
――オレは、アイツの盾にはならねェ。
 護ることよりも共に戦うことを選んだ自身に今出来ることは、せいぜいこうやって止血することくらいなのだから。
「その止血は彼女の為、ですか?」
「バカ言え。自分のためだ」
 に、とわらってゼルは答えた。
 仲間ライフを円満に過ごすために、これを為すのだ。
「……そうですか。根っからの苦労性ですね」
「アンタにも、いずれわかるぜ?」
 したり顔でにやりと笑みを刷く。
 エナと居て苦労しない人間など居ない。多かれ少なかれ振り回されて、土壇場で何らかの選択を迫られる。自身の新しい一面の発見と共に。
「気苦労をするのは貴方がた仲間同士の専売特許です。先ほども言ったとおり、私は私の思惑で敵にも味方にもなる身です。私が気苦労をすることはありませんよ。今までも、これからも」
 仲間ではないと執拗に繰り返してまで引きたがる境界線。それは少し前までのゼル自身と酷似していた。
 不躾と言えるほどに堂々と踏み込んでくるあの少女の性質は、ある意味において恐怖を感じさせるのだ。否応なく引きずられる心の変化から自身を守ろうと抗う、そのための境界線。
 だが、エナを深く知るゼルだからこそ言えることがある。
「でもアイツは、きっと迷い無くアンタを仲間だって言うぜ」
 リゼがエナをどう思っていようが、エナは頓着せずにそう言うだろう。
「……それは……どうでしょうね」
 その声音は否定の意味合いを含ませながらも、考えたことがあるか、聞いたことのある言葉に対するような其れだった。
 疑うようでいて、その可能性があることを――否、ただの可能性ではなく、最も大きな可能性であることを彼は既に認識している。