どの道、宿に帰ろうとしたところですんなり辿り着けるかどうか自信が無い。エナが宿に戻っていたなら、自身が居なくても計画通りに動いていくだろう。今回の要はリゼであって、自分ではない。ならば万一に備えて動く方がよっぽど理に適っている。
――オレが居なくても、か……。
自身の思考に、心が俄かに沈む。
必要とされることは面倒なことだが、彼らにとっての――否、エナにとっての自身の存在意義が希薄であることに感じる、微かな疎外感と罪悪感。
それは仲間と認めたからこそ生じた新しい感情。
世界一の剣士になることだけを考えて生きていたときには考えてもみなかった、己という存在への疑問。
夢に向かう一直線の道から外れ、遠回りしているのだと心の何処かで感じているせいかもしれない。
――ココに居ること……オレは間違ってんのかもな……。
考えに耽りながらもそれなりにある人通りを縫うように走っていた最中。
ふと店から出てきた人物に目が留まる。
上品ながらも金の匂いがする出で立ちと育ちの良さそうな立ち振る舞いが、この居住区では異様に浮いていた。
「お、リゼ! イイところにっ!」
「……ゼル? 何をしてるんですか、こんなところで。……エナさんは?」
駆け寄ったゼルが顔を顰めたのは「その薄ら寒い格好であんまり近づかないでください。同類だと思われたくありませんから」と柔らかい声と丁寧な喋り口調で吐かれた余計な一言のせいではなく、勿論、聞かれたくないことを何よりも先に聞かれてしまったからだ。
「あー……っと。それが、そのエナなんだけどよ……」
言い澱むゼルにリゼの目がすっと細められる。
「……何かしでかしましたか」
疑問の形を取っていながら、そこには疑問の意が微塵も含まれていない。寧ろゼルの耳には「何をしでかしたんですか」と聞こえた。
「や、別にそうと決まったわけじゃねンだけどよ……平たく言やぁ居なくなったっつーか……」
「……」
何も言わないリゼに居心地の悪さを感じてゼルは言い訳染みた可能性を付け足す。
「まぁ、もう宿に戻ってるかもしんねェし、そろそろオレも宿に戻ろうと……つか、そっちこそジストはよ?」
――オレが居なくても、か……。
自身の思考に、心が俄かに沈む。
必要とされることは面倒なことだが、彼らにとっての――否、エナにとっての自身の存在意義が希薄であることに感じる、微かな疎外感と罪悪感。
それは仲間と認めたからこそ生じた新しい感情。
世界一の剣士になることだけを考えて生きていたときには考えてもみなかった、己という存在への疑問。
夢に向かう一直線の道から外れ、遠回りしているのだと心の何処かで感じているせいかもしれない。
――ココに居ること……オレは間違ってんのかもな……。
考えに耽りながらもそれなりにある人通りを縫うように走っていた最中。
ふと店から出てきた人物に目が留まる。
上品ながらも金の匂いがする出で立ちと育ちの良さそうな立ち振る舞いが、この居住区では異様に浮いていた。
「お、リゼ! イイところにっ!」
「……ゼル? 何をしてるんですか、こんなところで。……エナさんは?」
駆け寄ったゼルが顔を顰めたのは「その薄ら寒い格好であんまり近づかないでください。同類だと思われたくありませんから」と柔らかい声と丁寧な喋り口調で吐かれた余計な一言のせいではなく、勿論、聞かれたくないことを何よりも先に聞かれてしまったからだ。
「あー……っと。それが、そのエナなんだけどよ……」
言い澱むゼルにリゼの目がすっと細められる。
「……何かしでかしましたか」
疑問の形を取っていながら、そこには疑問の意が微塵も含まれていない。寧ろゼルの耳には「何をしでかしたんですか」と聞こえた。
「や、別にそうと決まったわけじゃねンだけどよ……平たく言やぁ居なくなったっつーか……」
「……」
何も言わないリゼに居心地の悪さを感じてゼルは言い訳染みた可能性を付け足す。
「まぁ、もう宿に戻ってるかもしんねェし、そろそろオレも宿に戻ろうと……つか、そっちこそジストはよ?」

