「さて、さっさと終わらせてくれる? エナちゃんが浮気してないか心配だから」
この男は本当にブレが無い。
どんな時でも中心にはエナが居る。
否、中心に置くことを自分に課して楽しんでいるのか。
「会えない時間がどうとかって言ってませんでしたっけ?」
揚げ足を取ると、ジストは鼻をふふんと鳴らした。
「寂しさ余って浮気されたら元も子もないでしょ?」
「貴方はきっと浮気されても、自分も相手も責めることは無いんでしょうね」
溜め息と共に吐き出す。
浮気をされたとき、自分を責める者、相手を責める者、浮気相手を責める者のどれかに当てはまる人間が大多数だ。けれど彼はおそらくそのどれとも違う。
リゼの目から見て、ジストが自身を責めるような殊勝な性格をしているとは思えないし、相手を責めるほど矜持が低いわけでもない。
ましてや他人に無関心な男なれば、浮気相手を責めるはずもない。
「勿論じゃないか。こっそり相手の男を消しちゃえば解決するでしょ」
事も無げに言う男にリゼは目を見開き、感嘆の声を漏らした。
「ああ、本当ですね」
無かったことにするのなら、責める必要も無いというわけだ。
何の怒りも罪悪感も無く、淡々と存在を消し去ってしまうのだろう。この男は。
誰も責めないのに、決して許さない――ある意味、一番性質が悪い。
「でも、その危険思想をどうにかしないと逃げられちゃいますよ?」
少々歪んでいると自覚しているリゼ本人であっても、その倫理観は如何かと思うのだ。
普通の、特にエナのように真っ直ぐな気性の持ち主ならばまず間違いなく反発する。
ジストは「だろうね」と肩を竦めて手をひらひらと振った。
「だから浮気させない為に誠心誠意、頑張るんじゃないか。悪い虫をつけさせないために日々奮闘してるでしょ、ジストさんてば」
どこまで本気なんだかわからないこの男はそれでもしっかりと釘を刺すことを忘れない。
「わかったら、お前もエナちゃんには手ぇ出さないことだね」
言われずとも、二度とあんな思いは御免ですよ。とは敢えて胸の中に留め置いた言葉。
「忠告いただけるなんて、お優しいことですね」
養父を殺しハセイゼン家の当主になった以上、家を守るのが務めだ。女如きで殺されるわけにはいかないのだから、この先、エナに手を出すことは無いだろう。この男の興味がエナから逸れない限りは。
この男は本当にブレが無い。
どんな時でも中心にはエナが居る。
否、中心に置くことを自分に課して楽しんでいるのか。
「会えない時間がどうとかって言ってませんでしたっけ?」
揚げ足を取ると、ジストは鼻をふふんと鳴らした。
「寂しさ余って浮気されたら元も子もないでしょ?」
「貴方はきっと浮気されても、自分も相手も責めることは無いんでしょうね」
溜め息と共に吐き出す。
浮気をされたとき、自分を責める者、相手を責める者、浮気相手を責める者のどれかに当てはまる人間が大多数だ。けれど彼はおそらくそのどれとも違う。
リゼの目から見て、ジストが自身を責めるような殊勝な性格をしているとは思えないし、相手を責めるほど矜持が低いわけでもない。
ましてや他人に無関心な男なれば、浮気相手を責めるはずもない。
「勿論じゃないか。こっそり相手の男を消しちゃえば解決するでしょ」
事も無げに言う男にリゼは目を見開き、感嘆の声を漏らした。
「ああ、本当ですね」
無かったことにするのなら、責める必要も無いというわけだ。
何の怒りも罪悪感も無く、淡々と存在を消し去ってしまうのだろう。この男は。
誰も責めないのに、決して許さない――ある意味、一番性質が悪い。
「でも、その危険思想をどうにかしないと逃げられちゃいますよ?」
少々歪んでいると自覚しているリゼ本人であっても、その倫理観は如何かと思うのだ。
普通の、特にエナのように真っ直ぐな気性の持ち主ならばまず間違いなく反発する。
ジストは「だろうね」と肩を竦めて手をひらひらと振った。
「だから浮気させない為に誠心誠意、頑張るんじゃないか。悪い虫をつけさせないために日々奮闘してるでしょ、ジストさんてば」
どこまで本気なんだかわからないこの男はそれでもしっかりと釘を刺すことを忘れない。
「わかったら、お前もエナちゃんには手ぇ出さないことだね」
言われずとも、二度とあんな思いは御免ですよ。とは敢えて胸の中に留め置いた言葉。
「忠告いただけるなんて、お優しいことですね」
養父を殺しハセイゼン家の当主になった以上、家を守るのが務めだ。女如きで殺されるわけにはいかないのだから、この先、エナに手を出すことは無いだろう。この男の興味がエナから逸れない限りは。

