殺されるというのは大袈裟だが、それに準じる程度の嫌がらせは受けるに違いない。
おそらく奴は嬉々としてそれを行い、そして何故かそこにリゼも便乗するのだろう。犬猿の仲が手を組むことほど質の悪いもんはない、とゼルは思う。
時計塔を見ると、約束の時間まではまだ少しある。
「……一応探すか……」
彼女のことだ。また何処かで問題を引き起こしているとも限らない。
「ヴィルマ、アイツ、何処に行くとか何か言ってなかったか?」
再び演劇祭の準備に取り掛かっていたヴィルマは背中を向けたまま、さてね、と肩を竦めた。
「その辺を見てまわってるんじゃないのかい。少し位、放っておいてやりなよ」
ゼルはこめかみを掻いた。
「そーは言ってもなァ……」
放っておいてやりたいのは山々だが、それは時間までにエナが帰ってくるという確証があっての話だ。
そんなゼルの声音にヴィルマは半身だけを振り向かせた。
「前にも言ったけど、あの子に対して過保護過ぎやしないかい? それじゃあまるで父親か彼氏みたいだ」
「バカ言うなって。あんな破天荒な奴、目ェ離した瞬間にも問題起こすぜ? 曲がったことがでェっきれーだからよ、誰にでも突っかかっていくし」
曲がったことを嫌う割に平気で盗みを正当化する人間ではあるが、それは棚にあげておくことにする。
「あ」
ヴィルマが思い出したように声を上げた。
「そういえば、さっき横切って行った奉公者の列をしきりに気にしていたかな」
ぽん、と手を叩いてゼルはヴィルマを指差した。
「それだ! さんきゅ、ヴィルマ!」
ゼルは勢いよく踵を返し、走り出した。
自身が迷子になりやすい性質を持っていることはすっかり頭から消し飛んでいた。
おそらく奴は嬉々としてそれを行い、そして何故かそこにリゼも便乗するのだろう。犬猿の仲が手を組むことほど質の悪いもんはない、とゼルは思う。
時計塔を見ると、約束の時間まではまだ少しある。
「……一応探すか……」
彼女のことだ。また何処かで問題を引き起こしているとも限らない。
「ヴィルマ、アイツ、何処に行くとか何か言ってなかったか?」
再び演劇祭の準備に取り掛かっていたヴィルマは背中を向けたまま、さてね、と肩を竦めた。
「その辺を見てまわってるんじゃないのかい。少し位、放っておいてやりなよ」
ゼルはこめかみを掻いた。
「そーは言ってもなァ……」
放っておいてやりたいのは山々だが、それは時間までにエナが帰ってくるという確証があっての話だ。
そんなゼルの声音にヴィルマは半身だけを振り向かせた。
「前にも言ったけど、あの子に対して過保護過ぎやしないかい? それじゃあまるで父親か彼氏みたいだ」
「バカ言うなって。あんな破天荒な奴、目ェ離した瞬間にも問題起こすぜ? 曲がったことがでェっきれーだからよ、誰にでも突っかかっていくし」
曲がったことを嫌う割に平気で盗みを正当化する人間ではあるが、それは棚にあげておくことにする。
「あ」
ヴィルマが思い出したように声を上げた。
「そういえば、さっき横切って行った奉公者の列をしきりに気にしていたかな」
ぽん、と手を叩いてゼルはヴィルマを指差した。
「それだ! さんきゅ、ヴィルマ!」
ゼルは勢いよく踵を返し、走り出した。
自身が迷子になりやすい性質を持っていることはすっかり頭から消し飛んでいた。

