そこにはスタンガンが握られている。
彼は感情の無い面差しと冷えた眼差しで見下ろしていた。
「リ……!」
「無躾な人ですね」
そう言うと彼は、眉に一瞬だけ皴を寄せた。
苦々しくも腹立たしくも取れるその複雑な表情を見せたあと、彼は口元を笑みの形に刻んだ。
「過ぎた信頼は身を滅ぼしますよ。……駄目じゃないですか、敵に背中を向けては」
背後を許したのは己の甘さだ。
リゼの良心をまだどこかで信じていた。
完全な油断だった。
「エナ……っ!」
覗き込むが、エナの姿は既にそこには無い。
ダルシェウルの社長が有する部屋へと流されていったのだろう。
「……くそっ!」
床を叩く。
また見失った。
「たかが家がそんなに大事かよ……!」
怒り任せにゼルは声を荒げた。
「狸寝入りの泣き寝入りしかできねェ立場がそんなに大事か!」
リゼの目がすっと細められた。
その目が何を語っていたのか、ゼルに読み取ることはできない。
ただ、それは酷く冷ややかなものだった。
腕を取られ、捩りあげられる。
ただこなすだけのような淡々とした動きに抵抗らしい抵抗もせず、ゼルは叩きつけるように怒鳴った。
その冷えた瞳に、まだ熱を見出だしたくて。
「アンタの心に、仁の剣はねェのかよ!?」
リゼはその言葉には答えず、ゼルを背後から羽交い締めにして立たせると別の言葉を口にした。
「卑怯者だとおもいますか? 卑怯者で、臆病者だと?」
自虐的な言葉に加虐的な響きを宿して、彼は告げる。
「それでもほら、勝者は私です」
耳元で、認めろと言わんばかりに彼は強く囁いた。
彼は感情の無い面差しと冷えた眼差しで見下ろしていた。
「リ……!」
「無躾な人ですね」
そう言うと彼は、眉に一瞬だけ皴を寄せた。
苦々しくも腹立たしくも取れるその複雑な表情を見せたあと、彼は口元を笑みの形に刻んだ。
「過ぎた信頼は身を滅ぼしますよ。……駄目じゃないですか、敵に背中を向けては」
背後を許したのは己の甘さだ。
リゼの良心をまだどこかで信じていた。
完全な油断だった。
「エナ……っ!」
覗き込むが、エナの姿は既にそこには無い。
ダルシェウルの社長が有する部屋へと流されていったのだろう。
「……くそっ!」
床を叩く。
また見失った。
「たかが家がそんなに大事かよ……!」
怒り任せにゼルは声を荒げた。
「狸寝入りの泣き寝入りしかできねェ立場がそんなに大事か!」
リゼの目がすっと細められた。
その目が何を語っていたのか、ゼルに読み取ることはできない。
ただ、それは酷く冷ややかなものだった。
腕を取られ、捩りあげられる。
ただこなすだけのような淡々とした動きに抵抗らしい抵抗もせず、ゼルは叩きつけるように怒鳴った。
その冷えた瞳に、まだ熱を見出だしたくて。
「アンタの心に、仁の剣はねェのかよ!?」
リゼはその言葉には答えず、ゼルを背後から羽交い締めにして立たせると別の言葉を口にした。
「卑怯者だとおもいますか? 卑怯者で、臆病者だと?」
自虐的な言葉に加虐的な響きを宿して、彼は告げる。
「それでもほら、勝者は私です」
耳元で、認めろと言わんばかりに彼は強く囁いた。

