「………もうすぐ王子がくるよ」



『ふぁ……?』



楼愛がドアの方向を見ながら呟くと、ドアが急に開いた。




びっくりして楼愛に飛びつくと、ドアからは凄い低い声がした。


「なにやってんだ、楼愛」

「ぇ、まさかの俺だけですかぃ」


楼愛は私をわざとぎゅーっと抱き締めながらニヤリと笑った。


『楼愛~苦し~』


私は楼愛の大きな胸をぐいぐい押して反抗を試みるが、全く敵わなかった…



楼愛は男、私は女。



……敵うかぁ‼

すると、ふっと楼愛の力が無くなってビックリして目を開けると次は風生の胸の中だった…



この体制は知ってる!


アレだ!


『お姫様抱っこ!』


「初めてしてもらった?」


『うん……かな?』


「何その曖昧な返事」


楼愛はクスクス笑いながら悲しい目で私を見た。


何で…あの瞳はいつも悲しそうなんだろう……


私は楼愛の瞳をじっと見て居ると、ぐりんと視界が180°回って廊下に出た。


そして、上を見上げると風生が眉間にシワを寄せながら黙々と歩き続けた。

『…風生?』


「あ?」



ひっ‼怖っ‼


何だよ!


私は少し不機嫌になりながら風生の部屋に入った。