由奈が蹴って散らばったゴミなのだから、私が片付ける道理はない。
それは分かっていたけれど、恐怖で縮こまってしまった私の心は、もうこれ以上事を荒立たせたくない気持ちでいっぱいになっていた。
散らばったゴミを、必死に片付けた。
茶色くなったちり紙とか、排水溝に詰まってたホコリと髪の毛の固まりとか、噛み終わったガムとか。
「わぁ、汚ねぇ!」
恵梨が大げさに反応すると、周りから笑いが漏れる。
川島さんが、鼻をかんだ。
鼻をかんだティッシュを丸めると、ポイ、と床に放る。
「ちょっと、そこにも落ちてるよ」
川島さんがそう言うと、またみんなが笑う。
その中で、私だけが一人、床を這うようにしてゴミを拾った。



