「ばんび、遅かったじゃん!何かあったの?」

由奈も恵梨も、何事もなかったかのようにごく普通に接してくる。

え?さっきのは何だったの?

私は内心少なからずとまどった。

さっきの声は確かに、由奈と恵梨だった。それにもう一人は多分、同じマネージャー仲間の川崎さん。彼女は違うクラスだけれど、由奈たちと同じ中学校出身ということで最初から仲が良かった。

私、試されてるのかな?これからも友達を続けたいのかどうか、試されてるのかな?

「ごっめ~ん!なんか道端で、外国人に道を尋ねられてさ」

由奈の顔色を伺いながら、恐る恐る微笑みながら、私は「普通」を装った。

私は、この先もずっと、由奈と友達でいたいから。一緒に笑っていたいから。

「え、何それ?」

由奈が笑う。普通に笑う。

「ばんびってさ、普通の人が遭遇しないような場面に、出くわすよね!」

恵梨も普通に笑ってくれた。

「そうなんだよねえ」

私も、普通に笑った。よかった、一緒に笑えて。