タオルたたみを終えて教室に戻ってくると、颯太くんが私の帰りを待っていた。
「これ、ありがとう。助かったよ」
手に私のノートを持っている。
こないだ、試合で授業を欠席した颯太くんに、国語のノートを貸してあげていたのだ。
私がいないんなら、机の上に置いておいてもよさそうなものを。
颯太くんって、ほんとに律儀で丁寧な人だなあ!
私の中で、颯太くんのポイントがまた上がる。
だめだめ、颯太くんと由奈の恋路を邪魔しちゃ。
私は、表彰状を受け取るように仰々しくノートを受け取ると、一歩下がって深々と礼をした。
「ありがたく頂戴いたします」
ふざけたのは、ドキドキしている心を隠すためだ。
そんなこととは知らない颯太くんは、
「森永、いちいち面白くしなくていいから」
そう言って、えくぼを見せた。



