「あ」
気にしないことにしていたのだけれど、思わず声が出てしまう。
すれ違い様に、見えたのだ。
セーラー服の胸当てのホックが、外れていた。
そこから、いつもは見えない竹内さんのデコルテがちらりと見えたのだ。
雪のように白くて、ふんわりと膨らんだ胸元からは、お花の香りがしたような気がした。
女の私でも、一瞬、ドキッとしてしまった。
「竹内さ・・・」
竹内さんが、その涼やかな瞳で私を見る。何も言葉を発しないのに、「何?」と聞かれたと分かった。
「ホック、外れてる」
竹内さんは、下を向いた。
「おぉ」
竹内さんは、一応驚いたように目を見開いたけれど、恥ずかしがるでもなく、どちらかというとおじさんみたいな反応だ。
ズボンのチャックを開けたままトイレから出てきたおじさんが、誰かに指摘されたときに言う、「おぉ」に良く似ていた。



