夢見るゾンビ


後ろに、竹内さんが立っていた。

竹内さんは、由奈の目を見据えたまま、私と由奈の間に立った。

「な、なあに」

今まで無関心を装ってきた竹内さんの突然の行動に、由奈が少しうろたえる。

私もそうだったけれど、竹内さんの瞳に見入られると、心の中まで見透かされているような感覚になるのだ。

「飯野・・・あんたって、謙譲語の真逆を行く人間だな」

竹内さんはそうやって、しばらく由奈の目(あるいはその目の奥にあるもの)を見た後に、そう言った。

「・・・何それ。意味わかんない」

謙譲語は、こないだ国語の授業で習った。

敬語のひとつで、自分についてへりくだった表現をすることで相手が目上であることを表す言葉。ということだったと思う。

「あんたはそうやって、誰かを常に落としてないと自分のプライドが保てない。自尊心が低いからだ。誰かがうろたえ、傷つき落ち込んでいるのを見ると安心する。自分よりも低い人間がいると錯覚できるからだ」

竹内さんがそう付け加えた瞬間、由奈の顔がこわばった。

「・・・っ!」

竹内さんは構わずに続けた。

「でも本当は、怖いはず。自分が実は無能で、無価値な中身のない人間だと思われるのが、怖くて怖くてたまらない!だからあんたはいじめ続ける!あんた、親に誉めてもらったことがないんじゃないのか?愛されてる自覚、ないんじゃないのか?」