私はぶーちゃんの手をとると、教室から走り出た。
ぶーちゃんを引っ張って、二人で階段下の倉庫に逃げ込んだ。
ぶーちゃんは、泣きじゃくっていた。
「ばんびちゃ、ごめ・・・ホントに、ごめん・・・」
ぶーちゃん、そんなに声出して泣いたら、この場所が分かられちゃうよう。
ぶーちゃんをあやそうとして、背中を抱いてトントンしてあげた。
ぶーちゃんは、とても温かかった。
そう、これが、私が本当に欲しかった温もりだ。
「ねぇねぇ、ぶーちゃんや。前から気になってたんだけど」
ぶーちゃんがやっと、少し泣き止んだ。
「私だけぶーちゃんと呼ぶのもアレなんで、私のこともあだ名で呼んでくれないかな」
「なんて呼べばいい?」
「ばーちゃんとか?ばんびのばをとって」
「プ!ばーちゃんって…」
ぶーちゃんが笑いだした。
「ばんび、でいいよ」
私がそう言うと、ぶーちゃんは最初、遠慮がちに
「・・・ばんび」
そう呼んだ。
「なあに、ぶーちゃん」
「ばんびっ」
「ぶーちゃんっ」
「ばんび~っ」
「ぶーちゃん~っ」
何も言うことはなかったけれど。
友の名を呼ぶ、ただそれだけで私たちは楽しかった。



